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麻疹(はしか)の流行について

[2024.03.31]

麻疹(はしか)患者さんが国内で報告され、メディアでも取り上げられています。

東京都感染症情報センターによれば、都内では2019年に流行があり、その後コロナ禍では発生はほぼゼロでしたが、昨年からまた発症報告が見られるようになっています(東京都感染症情報センター 麻疹の流行状況)。麻疹の発生は日本だけではなく世界的にも流行しており、コロナ禍で麻疹の予防接種率が下がったことが原因ではないかとも言われています(はしかの世界的流行 欧州で60倍 国内も感染相次ぐ 国が注意喚起)。

麻疹は高熱、咳、発疹以外にも肺炎、脳炎、心筋炎などの合併症を併発するリスクが高い感染症で、発症すると1000人に1にが死亡すると言われています。また空気感染をおこすため新型コロナウイルス以上の感染力があります(新型コロナウイルスは飛沫あるいはエアロゾル感染)。麻疹を発症すると体の免疫力が低下し、さらに別の感染症をおこしやすくなるなど非常に厄介な病気です。

麻疹を発症すると約30%に合併率が見られ、その半数が肺炎です。脳炎はさらに頻度は低く0.1%から0.05%程度ですが、脳炎を発症すると20-40%で精神発達遅滞、てんかん、麻痺などの後遺症が残る可能性があります。また、さらに頻度は低いのですが麻疹の発症後7-10年経過した後に亜急性硬化性全脳炎(SSPE)という病気が発症することがあります。SSPEは発症すると知能障害、運動障害が徐々に進行し半年~1年で死に至る病気です。発症頻度は脳炎より低く10万人に1人と言われていますが、もっと多いという報告もあります。ただしSSPEの80%は、1歳未満で麻疹に感染した方や、ステロイドや免疫抑制剤の使用などで免疫が落ちている方で発症します(国立感染症研究所 麻疹Q&A)。

このように麻疹は感染力が強く非常に怖い病気(特に小児にとっては)なので、ワクチン接種が非常に重要です。以前はワクチン接種は1回のみですが、現在は2回接種が推奨されています(1回では免疫が付かない人が5%程度いるため)。ワクチンについては、やはり国立感染症研究所の麻疹Q&Aにわかりやすく書かれています。

麻疹が国内で流行するかもしれないという報道を受けて、ワクチンについての問い合わせが非常に増えています。また現在、国内で使われている麻疹ワクチンは麻疹・風疹ワクチン(MRワクチン)というもので、風疹ワクチンとセットになっています。風疹も妊婦さんが感染すると胎児に影響が出るため、以前から行政が補助金を出して接種を推進しています。そのため、今回の報道を受けてワクチン需要が急増しすぐには手が入らなくなっています。

医師会から通達もありましたが、現状は

現在あるワクチンは、まず子供の定期接種に優先的に使用する(重症化したり合併症をおこす方は多くが子供のため)

大人でワクチン接種を希望する場合は、まず抗体検査をおこなった上で抗体が不足していればワクチン接種を検討する

ということになっています。

「はしかにかかったりワクチンをうった記憶もないので、すぐにでもワクチンをうちたい」という方もいますが、実際には覚えていないだけで幼少期に感染していたり、あるいはワクチン接種が1回でも十分な免疫があることが多く、国立感染症研究所が2022年におこなった抗体保有率調査でも、20歳以上であれば概ね90%以上の人が十分な抗体をもっていることが分かっています(麻疹の抗体保有状況)。

 

まとめ

世界的な麻疹の流行をうけて、国内でも麻疹が流行する可能性があります。

麻疹は感染力が強く、特に子供が感染した場合に後遺症が残る可能性があります。

現在、ワクチンがすぐには接種できない状況ですが、大人は多くの方が抗体を保有しているので心配な方も慌てずにまず抗体検査を受けることが重要です。

Vaccination a patient in hospital during an epidemic of influenza, measles. Flu shot, protection and prevention of viral infectious diseases

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