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シングリックス(組み換え帯状疱疹ワクチン)の接種により認知症の発症が減る可能性

[2024.09.16]

帯状疱疹という病気は発疹と神経痛をおこす厄介な病気で、特に50歳以上で患者数が増加します。この帯状疱疹を予防するワクチンには、従来からある水疱瘡のための生ワクチンと、最近開発された組み換えワクチン(シングリックス)の2種類があります。シングリックスの方が予防効果が高く、最近は行政から補助金が出るようになり接種する方が増えています(補助金の有無は行政区によって異なります)。以前、このブログでも紹介しています(帯状疱疹の予防接種)。

最近、このシングリックスを接種している方が認知症の発症が少ないという報告がありました(PMID: 39053634)。2014年から2017年までに65歳以上の人で生ワクチンを接種した人達と、2017年から2020年にやはり65歳以上で組み換えワクチン(シングリックス)を接種した人達のその後を比べると、シングリックスを接種した人達の方が認知症と診断されるまでの時間が遅くなっており、ワクチンによる認知症発症予防効果が示唆されます(イギリスでは2017年を境にシングリックスが導入されたため、その前後で生ワクチンからシングリックスに移行したようです)。またこの効果は女性においてより強く認められました。今回の研究では前頭側頭型認知症やレビー小体型認知症は除外されており、主としてアルツハイマー型認知症に対する予防効果を見ていると考えられます(女性の方がアルツハイマー型認知症を発症するリスクが高いので、予防効果が女性においてより高いことも、シングリックスはアルツハイマー型認知症を予防しているということを支持しています)。

なぜシングリックスが認知症を予防するのかはよく分かっていません。帯状疱疹の原因となる水痘ウィルスは子供の時に多くの人が感染しますがに、これが長い年月の後に認知症を発症する原因となる仮説があります。アルツハイマー病のような認知症の発症機序は非常に複雑だと考えられていますが、その機序の一部に脳内での免疫反応が関与しているという仮説があります。ワクチンは免疫賦活作用があるので、それを介して認知症の発症を予防しているのかもしれません。

 

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