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帯状疱疹の予防接種

[2021.02.13]

帯状疱疹という病気があります。

多くの方は子供の時に水ぼうそうにかかります。水ぼうそうは水痘帯状疱疹ウイルスの感染によって発症しますが、このウィルスは水ぼうそうが治癒した後も体内の神経節という部分に潜んでいます。加齢ともに免疫力が低下すると、このウィルスが再活性化して帯状疱疹を引き起こします。帯状疱疹ではウィルスが神経に沿って拡がり赤い発疹が出て神経痛が起きます(図)。

Shingles (Disease), Herpes zoster, varicella-zoster virus. skin rash and blisters on body

治療は抗ウィルス薬の服用ですが、治癒した後でも神経痛が後遺症として残ることがあります。特に高齢で発症した場合、神経痛の後遺症が残りやすいと言われています。20代で半年後に神経痛が残っている割合は8.3%ですが、60代以上では30-40%まで増えるという報告があります(文献1)。また比較的希ですが、目の近くに帯状疱疹が起きると角膜炎を合併したり、あるいは神経痛だけでなく手足の麻痺が起きることがあります。

帯状疱疹は50歳以上で急激に増加するため(図)、50歳以降であれば水痘帯状疱疹ウイルスのワクチンを接種し発症を予防した方が良いと考えられています。

横軸は帯状疱疹の発症年齢、縦軸は患者数(文献2より抜粋)

これまでは、帯状疱疹の予防接種として子供にも使用する水痘ワクチンが用いられてきましたが、このワクチンによる帯状疱疹の予防効果は50-60%と言われていました。ところが、近年、シングリックスという新しい帯状疱疹のワクチンが発売されました。このワクチンの予防効果は90%以上あると言われており、つまり接種によりほとんど発症しなくなると考えられます。

実際にシングリックスを接種して48ヶ月経過した時点で、プラセボ(偽薬)群では計221人が帯状疱疹を発症していましたが、シングリックスを接種した群では帯状疱疹の発症者は23名でした(文献3)。

すばらしい効果ですが、難点があります。まず2ヶ月の間隔で2回接種が必要です。また、最大の難点はその価格です。1回の接種で2万円前後必要です。価格はクリニックによって多少異なりますが当院では1回1万9千円で接種しています。1回でも高価なのに、2回必要なわけですから、効果がいくら素晴らしいといっても、値段を聞けば二の足を踏む人も多いと思います。

将来的には価格が下がって、より多くの人が利用できるようになれば良いのですが。

 

 

 

 

文献

1 The change in zoster‐associated pain treated with oral valaciclovir in immunocompetent patients with acute herpes zoster Kurokawa et al. Int J Clin Pract, 2007

1 Herpes Zoster and Recurrent Herpes Zoster Shiraki et al. Open Forum Infect Dis
. 2017

2 Efficacy of the Herpes Zoster Subunit Vaccine in Adults 70 Years of Age or Older Cunninghamet al. NEJM 2016

 

 

 

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