糖尿病治療薬がパーキンソン病に効くかもしれない
糖尿病の治療薬でGLP−1作動薬という薬があります。この薬は血糖値を下げる以外にも体重が減る作用があり、最近は痩せ薬としも流通しているようです。
このGLP-1作動薬がパーキンソン病やアルツハイマー病に効果があるのではないかという可能性が10年以上前から提唱されています。パーキンソン病のモデル動物(人為的にパーキンソン病と似た状態にした実験動物のこと)に効果があったという報告や、糖尿病患者さんでGLP-1作動薬を使っている人は、そうでない人と比べるとパーキンソン病を発症する率が低いといった報告があります。
昨年末に大阪大学の医師が、このGLP-1作動薬であるセマグルチドという薬を使ってパーキンソン病の治験をおこなうと発表しました。
私自身、過去に一人だけ糖尿病を合併しているパーキンソン病患者さんにGLP-1製剤を使ってみたことがあります。その方はパーキンソン病の薬はかなり多く使用しており、それでも薬の効果が急に切れたりと薬物療法がかなり限界に近い方でしたがGLP-1製剤を始めた後は3年くらい病状が安定しました。
そうしたこともあって、このGLP-1製剤のパーキンソン病への応用については関心をもって見ていたのですが、海外では成功した治験は残念ながらまだありません。今年にはいって、海外から既存のGLP-1作動薬を改良した薬でパーキンソン病の治験をおこなったが、効果が見られなかったという報告がありました(PMID: 38101901)。
ただ、これは私見ですが、GLP-1製剤については対象患者の選択や薬剤の工夫によってパーキンソン病に対する効果が認められるときが来るのではと思ってはいるので、良い結果が出てくるのを待ちたいです。