糖尿病治療薬がパーキンソン病に効くかもしれない(続き)
前回、GLP-1作動薬という薬がパーキンソン病の治療に使えるかもしれないけれど、まだ治験で良い結果が出ていないと書きました。今月になってフランスからGLP-1作動薬のリキシセナチド(商品名リキスミア)がパーキンソン病の進行を抑えたという報告がありました(Trial of Lixisenatide in Early Parkinson’s Disease)。
今回の治験では、運動合併症がない発症から3年以内の早期の患者さんを対象にしています。156名の患者さんに対して無作為二重盲検試験をおこない、12ヶ月後にパーキンソン病の症状(重症度)を判定すると、リキシセナチドを使用した群ではほとんど症状の進行がなかったのに、プラセボ群では有意に進行が見られました。副作用はリキシセナチドを使用した群で有意に多く、主な副作用は嘔気でした。
今回の治験(報告)の特徴は、パーキンソン病の症状を改善したかどうかではなく進行を抑えたことを証明した点です(実際に症状も改善していた可能性もありますが、不明です)。これまでパーキンソン病の進行を抑える様々な薬が開発されたり、既存の薬が試されたこともありますが有意な結果は得られていません。
もし本当にリキシセナチドが病気の進行をある程度抑えることができるのであれば、画期的なことです。リキシセナチドは糖尿病患者さんに対しては以前からよく使用されている薬です。吐き気の副作用も徐々に慣れることが多いようです。ただし毎日の注射が必要です。薬価は1ヶ月分で7000-8000円程度です。ただ、GLP-1作動薬は食欲を減らし体重を落とす作用があります。肥満の糖尿病患者さんでは都合が良いのですが、パーキンソン病患者さんは痩せ型の人が多く、GLP-1作動薬を使うとさらに痩せてしまうかもしれません。
今後ですが
さらに大規模の治験をおこなう必要があります(今回の治験は第2相試験なので、薬として認可されるためには第3相試験が必要)。また早期患者だけではなく、もう少し進行した患者さんでも効果があるか知りたいところです。GLP-1作動薬には毎日注射が必要なものと週1回の注射で良いものがあります。患者さんの負担を考えると、できれば週1回注射のGLP-1作動薬で同じような効果が得られることが分かると良いです。
注意していただきたいのは、今回の治験は海外でおこわなわれたものなので、今後日本でこの薬がパーキンソン病に認可されるためには、国内でも治験をおこなう必要があります。