メニュー

長引く咳

[2020.11.10]

季節の変わり目、特に秋から冬になるこの季節になると。「咳が止まらない」という訴えの方が多く受診されます。

「咳止めが効かない」「抗生物質をもらってのんでいるが良くならない」と言われる方が目立ちます。

では、なぜ咳が長引くのでしょうか?

医学的には3週間未満であれば急性咳嗽、3週間以上8週間未満なら遷延性咳嗽、それ以上を慢性咳嗽と分類しますが、1週間以上咳が続くと生活に支障が出ますし、不安にもなります。

長引く咳の原因として、日常の診療で経験することが多い原因をご説明します。

  1.  感染後咳嗽 かぜをひいた後に咳が続き、レントゲン検査でも肺には異常を認めない状態です。かぜのウィルス感染を引き金として咳反射が活性化され、咳が出やすい状態になります。乾いた咳であることや中高年や女性に多いとされ、布団に入った後から夜間、朝にかけて咳が出やすくなります。長引く咳で医療機関を受診する患者さんの40-50%が、この感染後咳嗽と報告されています。基本的には治療をしなくても自然に軽快します。
  2. 咳喘息 通常の気管支喘息と異なり、呼吸困難になったり、ヒューヒューという音が気管から漏れることが無く慢性の咳のみを症状とする喘息です。日本では、慢性咳嗽のもっとも多い原因と言われています。咳が出やすい時間帯は、やはり夜、早朝に多いのですが昼間でも出ます。咳も乾いた咳、痰混じりの咳の両方があります。症状の悪化しやすい季節があり、診察しても気管支喘息のように所見を認めることはほとんどありません。治療としては、気管支喘息に用いる吸入薬を用います。
  3. アトピー咳嗽 アトピー素因を有する中年の女性に多く、「のどがむず痒い」「いがいがする」と言われることが多いです。やはり就寝時から夜間、起床時に咳が出ることが多く、周囲の温度、湿度の変化や、会話、電話、運動を引き金に咳が出ます。治療としては、抗ヒスタミン薬(アレルギーの薬)や、やはり喘息に用いる吸入薬が有効です。咳喘息もアトピー咳嗽も、アレルギー性の咳であり治療法は共通しています。
  4. 逆流性食道炎 胃酸が食堂に逆流する病気です。胸やなどの食道症状を伴うものは夜間に多く、咳が昼間に多く夜間に少ないものは食道症状は乏しいとされています。病歴により診断しますが診断が難しいこともあり、他の原因が否定された場合に診断的治療として胃酸の分泌を抑える薬を試してみることもあります。
  5. 後鼻漏による咳嗽 鼻汁が喉の奥にたれ込んで咳が出ます。このたれ込みは患者さん自身が自覚する場合もあれば、自覚がない場合もあります。後鼻漏が起こる原因としては、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、鼻ポリープなどがあり、それぞれの原因に応じた治療をおこなうことになります。
  6. 薬剤性の咳嗽 最近はあまり使いませんが、降圧薬のACE阻害薬という薬は副作用で乾いた咳が出ることがあります。ただ、現在服用している方で咳が出ていない人は、今後も咳の副作用が出ることはありません。ACE阻害薬は誤嚥性肺炎の予防効果があり高齢者に用いることがあります

 

上記の原因の1-3については、鑑別が困難なこともあります。

治療ですが、感染後咳嗽は自然に軽快すると書きましたが、それでも1週間続くと患者さんは辛いので、咳喘息やアトピー咳嗽に準じて治療をおこなうこともあります。

また、治療はいずれも速効性は無く、患者さんには「まず1週間は我慢して薬を続けてみてください」と説明しています(時々、「咳が止まらないから」という理由で2-3日単位で医療機関を受診し、いろいり薬をもらっている気質ます)。

1-6以外にも、長引く咳の原因はいろいろありますが、咳だけで1冊の本になるくらいですので今回は割愛いたします。

 

咳嗽・喀痰の診療ガイドライン 2019

 

 

 

 

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME