ホスピス型有料老人ホーム
数年前からホスピス型有料老人ホームという形態の有料老人ホームが増えており、特にこの2-3年で急増しています。こうしたホームには特徴があり
主として進行期の神経難病や癌末期の方を対象にしている。
入所金や月々にかかるお金が安い。特に入所金は従来の有料老人ホームに比べると1/10以下(高級有料老人ホームと比較すると1/00程度)と格安です。
ただし、安く入所できるのは先に書いたように、進行期の神経難病や癌末期の方となります。例えば、膝が悪くて歩けないから入りたいというような方は対象外として断られるか、別に高い入所金、利用料が設定されている所もあるようです。
部屋は個室タイプですが、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅に比べると狭いことが多く、トイレも部屋にはついていないことも多いようです(そもそも、自分でトイレに行ける人を対象としていないためでもあります)。
では、なぜこのようなホスピス型有料老人ホームには格安で入所できるのでしょうか?これは、訪問看護の利用があるからです。神経難病や末期癌の方は、点滴や胃瘻の管理、痰の吸引、浣腸など看護師でないとできない医療行為を多く必要とします。このようなホスピス型ホームでは、看護師は訪問看護という形で看護をおこなう仕組みになっており、利用者さんはホームの利用料とは別に訪問看護のお金を払います。訪問看護は通常介護保険で行われますが、神経難病や末期癌の方は医療保険で受けることが出来ます。神経難病の方で難病受給者証を持っていれば、訪問診療、訪問看護、薬剤料含めて月々の負担は5千円から多くても2万円です。末期癌の方でも、自己負担が1-3割ですし高額医療制度を利用することもできます。つまり、こうしたホームは入所金が安い分を、訪問看護を利用してもらうことにより賄っているという仕組みです。なので入所者が神経難病や末期癌といった、訪問看護が医療保険で利用でき、かつ1日に複数回看護師が患者のもとに行かないと行けないような方を対象としているのです(複数回行けば、その分訪問看護の費用が上がります)。
SNSを見ていると、こうしたホスピス型有料老人ホームに対して医療関係者からは批判的な意見もあります。
まず、患者さんから見れば、自宅での介護が難しい方が比較的安い費用で施設に入所でき訪問診療、訪問看護を受けられるのは大きなメリットです(だからこそ、ホームが急速に増えている)。
例えば、筋萎縮性側索硬化症という神経難病は非常に介護、看護が大変な病気です。自宅で介護が難しくなっても、これまでは長期で受け入れてくれる病院や介護施設は非常に少数でした。逆に、ホスピス型有料老人ホームは、看護師が頻回に関わる必要のある方の方が利益が上がりますので受け入れには積極的です。
ただし、今後、自宅で看ることが難しい難病患者さんが多くこうしたホームに集まっていくと、ホームでも負担が非常に大きくなっていくのではないかと思います。24時間の看護ができると言っても病院ではないですし、医師が常駐している訳でもないです。夜間の人手は限られると思いますので、重症の方が増えてくると手が回らなくなる可能性もあります。
また、こうした訪問看護を利用することにより入所金を安くするというビジネスモデルは、ある意味制度のの隙間をついたビジネスモデルと言えますし、こうしたホームの最大手などが大規模な不正請求をおこなっており問題となっています。
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こうした不正請求が多発化すると当然国も何らかの規制をおこなう可能性があり、そうなると今のビジネスモデル自体が厳しくなり入所者の利用料が増えたり、入所者の選別化が始まる可能性があります。
ホスピス型有料老人ホームはここ数年急増しており、自宅での介護が大変だけれども有料老人ホームに入るだけのお金がないという方にとっては非常にありがたい施設であることは確かです。ただ、その一方で、今後同じようなやり方でやっていけるのかどうかは未知数です。