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診察室で認知症をこのように診断しています

[2022.11.18]

認知症の診断=MRIやCTなどの画像検査と思っている方は多いと思いますが、実際にはまず診察室でおこなう診察の比重が非常に大きいのです。この診察で、どの程度認知症らしいのか、あるいはそうでないのか、認知症の可能性が高いとすればどのタイプの認知症なのかということを判断した上で、どのような検査をおこなうかを決めます。

外来を受診される方の訴えの2/3は物忘れです。ただ物忘れと言っても、ピンきりで、「漢字が出てこない」「人の名前が出てこない」「特に仕事や生活には支障がない」といった方は、認知症ではない可能性が高いです。一方、物忘れについても、本人はあまり自覚はないものの家族や同僚から見ておかしいと思う程度だったり、5-10分もしない内に同じ事を言ったり聞いたりするような場合は病的な記憶障害の可能性があります。

認知症の方に、「最近、心に残っているニュースや事件を教えてください」と言っても、非常に漠然とした答えしか返ってこなかったり、「最近、テレビや新聞は見ないから」と言われることがあります。

アルツハイマー型認知症の方は空間認識の障害があり、比較的初期でも道に迷うことが珍しくありません。普段行き慣れているパチンコ屋さんに行こうとしたら、途中で道に迷ってたどりつけなかったり、あるいは毎年かかさず行っているお墓参りで、一人でお墓から駐車場まで戻ろうとしたら迷子になってしまい、家族がおかしいと思い一緒に受診された方がいました。

通常、最初の診察の時には長谷川式簡易知能評価スケールやミニメンタルスケールテストなどの、簡単な認知機能の検査をおこないます。こうした検査は、記憶力だけでなく、見当識といって日時や自分が今どこにいるのかを正確に認識しているか、あるいは計算や言語などの機能を簡単にテストします。こうした検査は「〇点以下の場合は認知症の可能性がある」という点数が決まっていますが、必ずしもそれ以上の点数であっても認知症は否定できません。例えば、こうしたテストの点数が正常値であっても、物盗られ妄想がある高齢の方は認知症の可能性が高いです。

アルツハイマー型認知症では、空間認識の障害があるため立方体の模写をしてもらうとうまく書けません。これも記憶障害、見当識障害と並んで重要な徴候です。

質問に答えられなかったり自信が無いと傍にいる家族の顔を見たりする方がいます。これを「振り向き徴候」と言って、アルツハイマー型認知症に特徴的な所見です。また、今日の日付が分からないと「今日はカレンダーを見てこなかったから」とか、言いつくろいをする方がいます。やはりアルツハイマー型認知症に特徴的な所見と言われています。

家の中で、人や子供、動物が見えたり、あるいは床のゴミが虫に見えたりハンガーに洋服がかかっていると人に見える人がいます。こうした幻視はレビー小体型認知症を疑う所見です。レビー小体型認知症の方は、物忘れなどは軽度のことがあり、前述の幻視や、最近よく転ぶといった物忘れ以外の症状で受診されることもあります。

アルツハイマー型認知症では、歩行障害が出現するのは中等度以上です。ですから初診時より歩きにくくなった、よく転ぶといった症状が明らかな場合はレビー小体型認知症、特発性正常圧水頭症、多発性脳梗塞、慢性硬膜下血腫などの病気を疑います。

前頭側頭型認知症という種類の認知症では、記憶障害は目立たなくても、細かい数字などを非常に気にします。起床時間、出かける時間などを分単位で気にします。以前診た方は、おかずをレンジで温めるのに何℃で何分ということを決めていて、少しでも家族が間違うと激高しました。また診察室で黙って出て行ってしまうことがあり、「立ち去り徴候」と言われています。

以上、とりとめなく書きましたが、診察室では上記のようなことを考えながら診察をおこない、認知症の疑いがあれば次の段階の検査(血液検査や画像検査)をおこなっています。

Practitioner doctor and senior man patient in hospital medical office. Consultation and diagnosis of mental health.

 

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