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新世代の睡眠導入剤

[2020.06.03]

医療機関で睡眠導入剤を処方されている方はたくさんいます。私も医師になってからずっと、多くの睡眠導入剤を処方してきました。不眠症は年齢とともに増えてきますので、厚生労働省の調査では65歳以上の患者さんの4人に1人は睡眠導入剤を処方されています。
これまでの睡眠導入剤は「ベンゾジアゼピン系」という薬が主流でした。この薬は効果発現が早いためすぐに眠れ、また筋弛緩作用、抗不安作用もあるため気持ちよく眠れることが特徴です。このため長い間、睡眠導入剤の主流として多くの人に処方されてきました。

しかし、社会の高齢化にともない、多くの高齢者がこのベンゾジアゼピン系の睡眠導入剤を服用するようになると、その副作用が問題になってきたのです。
ベンゾジアゼピン系の睡眠導入剤を服用していると、転倒・骨折の危険が1.6倍に増えます。また精神的な依存や、服用を中止することによるリバウンドが問題になってきました。
そこで、近年、こうした副作用(危険)の少ない睡眠導入剤が開発されています。
その代表的な薬がオレキシン受容体拮抗薬という種類の薬です。オレキシンというのは脳の中で、人間を覚醒状態に保つ作用のある物質です。このオレキシンを働かないようにする薬を作ったところ、睡眠導入効果があることが分かりました。現在、ベルソムラとデエビゴという2つの薬が発売されています。これらの薬は従来のベンゾジアゼピン系の薬と異なり、筋弛緩作用が少なく転倒する危険が少ないと考えられています。また依存性や中止後のリバウンドも少ないことが分かっています。ただ、ベンゾジアゼピン系の薬と比べると、やや速効性にかけ睡眠薬としてはやや「弱い」ため、切り替えると「この薬では眠れない」と訴える方もいます。

ただ、今後は初めて睡眠導入剤を処方される高齢者は、まずこのベルソムラ、デエビゴが処方される流れになっていくと思います。また、ベンゾジアゼピン系から切り替える場合も、いきなり切り替えるのではなく併用しながら今までの薬を徐々に減らしていくと行った工夫が必要です。

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奥村泰之 高齢者への向精神薬処方に関する研究 高齢者医薬品適正使用検討会 2017
北村正樹 不眠症を改善する第2のオレキシン受容体拮抗薬 日系メディカル 2020

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