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コロナ後遺症(コロナ罹患後症状あるいはlong covid)についての新しい知見

[2023.12.11]

ワクチンの普及や集団免疫によって、新型コロナウイルスに感染しても重症化する人は非常に減りました。しかし軽症で済んでも症状が長引く人がいて、こうした現象をコロナ罹患後症状(英語ではlong covidなど)と呼んでいます。

国内の調査でも、新型コロナウイルス感染後1年を経過しても患者全体の30%で1つ以上の症状が残っていることがわかっています。

診断後12 カ 月時点に 5%以上残存していた症状は.13% : 疲労感・倦怠感,9% : 呼吸困難,8% : 筋力低下,集中力低下,7% : 睡眠障害,記憶障害,6% : 関節痛,筋肉痛,5% : 咳嗽,喀痰, 脱毛,頭痛,味覚障害,嗅覚障害と非常に多彩です。

なぜ、新型コロナウイルス感染症ではこのように様々な症状が長く続くのかということについては様々な説がありよくわかっていませんでしたが、

最近アメリカの研究者たちが新しい仮説となる研究結果を発表しました(新型コロナ後遺症は、血中セロトニン濃度に関係かDOI: 10.1016/j.cell.2023.09.013

コロナ罹患後症状を呈する人たちの糞便からは微量だがコロナウィルスが検出され、このことは体内からウィルスが完全に排除されていないことを示しています。またこうした人達の血液中のセロトニンという物質の濃度が減少していることを発見しています。この論文の著者たちは、体内に残ったウィルスが腸管内で炎症をおこし体内のセロトニンの産生を妨げることにより(すべての症状ではないにせよ)コロナ罹患後症状を引き起こしているのではないかと推察しています。

セロトニンは必須アミノ酸(体内では作ることができず外から摂取する必要があるアミノ酸のこと)であるトリプトファンから体内で作られる物質で、主として脳の中で神経細胞同士情報伝達に重要な役割を果たしています。またうつ病やパニック障害の治療に脳内のセロトニンの量を増やす薬が用いられていますので、セロトニンは情動など脳の働きに非常に重要な物質と考えられています。

これまでの研究でも、コロナ罹患後症状を呈する人の体内にはウィルスが残っているという報告ああリましたがセロトニンとの関係を示した研究は(おそらく)初めてだと思います。

今後、前述したような抗うつ薬なので治験が行われるのだと思いますが、現時点では保険適応がないので使えません。セロトニンはトリプトファンというアミノ酸から作られます。すでにこのトリプトファンはサプリメントとして販売されています(寝付きを良くするという効果を謳っています)。サプリメントで改善ができればそのほうが患者さんにしては手軽だと思います。

ただし、この記事を呼んでトリプトファンのサプリメントを試してみようと思った方がいれば以下に注意してください。

セロトニンは、コロナ罹患後症状のすべての原因ではありません。セロトニンとの関係は見られなかったという研究もあります。

サプリメントを服用する場合は、かならず書かれている1日の摂取量を守ってください。サプリメントも過量服用すれば体によくない影響を及ぼす可能性があります。

 

参考文献 新型コロナウイルス感染症 診療の手引 罹患後症状のマネジメント

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