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女性ホルモンと認知症

[2023.03.15]

認知症は年齢とともに増える病気ですが、その発症には男女差があります。認知症の中でもっとも多いアルツハイマー型認知症は、女性の方が多いことが知られています。例えば、外来を受診される認知症初診患者さんを調べると男女比が概ね1:2です(女性が男性の2倍ということです)。

女性に認知症が多い理由はいくつか考えられます。まず男性は女性に比べて寿命が短いので、認知症を発症する前に亡くなる方が多い可能性があります。もう一つが、女性ホルモンの影響です。女性では、閉経後に認知症の発症率が増加しますので女性ホルモン量の低下が認知症の発症に関与していると考えられています。エストロゲンという女性ホルモンは脳に色々な作用を及ぼし、認知機能や神経細胞の保護に広く関与していると考えられています。閉経直前の女性でも記憶力は同年代の男性より優れており、閉経後に女性ホルモンが急激に減ることが記憶力の低下、認知症の発症につながっている可能性があります。

更年期障害によるホットフラッシュなどの諸症状の緩和に対して、女性ホルモンの補充療法がおこなわれることがあります。では、女性ホルモンの補充をおこなうことによって閉経後の認知症を予防することができるのでしょうか?こうした疑問に対してこれまでに様々な研究が、実際に女性を対象におこなわれてきました。個々の研究を一々列挙しても分かりづらいのでしませんが、まず結論から言うと閉経から10年以上経過した女性に対して女性ホルモンを投与しても認知症の予防効果はなくむしろマイナスの影響しか認められていません。

一方、閉経から10年未満の女性を対象として研究では、女性ホルモンの補充療法が認知症の発症予防に効果があったという報告と効果が無いという報告の両方があり結果ははっきりしていません。こうした結果が相反する場合はもし効果があっても、その効果はそれほど高いものではないと思われます。

また、すでにアルツハイマー型認知症を発症している閉経後の女性を対象に女性ホルモンを投与した研究もありますが、治療効果は認められていません。

以上をまとめると、現時点では認知症の予防、治療目的で女性ホルモンの補充療法をおこなうことは推奨されていません。

閉経後の女性ホルモン補充療法は、ホットフラッシュなどの諸症状に対して有効ですが、閉経後10年以内もしくは60歳以下の方が対象になります。乳癌や静脈血栓症、脳血管障害の既往のある方は対象外です。あくまで更年期障害の諸症状に対する治療であり、上記に述べたような認知症の予防、あるいは骨粗鬆症や動脈硬化など慢性的な疾患の予防を目的とした治療は推奨されていません。

 

以上、UpToDateの記載内容を参考に作成しました。

Female sign made from medicine pills

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