繰り返す口内炎
今までにも何人かの患者さんから「口内炎がよくできて困る」と言われたことがあります。妻も若いときから口内炎が繰り返しできるそうで、相談されたことがあります。しかも一度に複数の口内炎ができるため、刺激物や揚げ物などが食べられなくなります。治ってもまたしばらくすると、再発しているようです。
口内炎を繰り返す病気として有名なものに、ベーチェット病や潰瘍性大腸炎という病気があります。前者は口内炎だけではなく、陰部潰瘍、ぶどう膜炎(眼の病気)や脳神経系や消化管にも合併症がおきます。後者は腸管に炎症がおきて下痢、血便を合併する病気です。ただ、妻を含め多くの口内炎で悩んでいる人は口内炎以外の症状はありません。おそらく繰り返すことからある種の「体質」なのでしょうが、これって病気なのでしょうか?
そう思って、UpToDateという英語の教科書で調べたところ、その名もずばり「再発性口内炎(RAS)」という病気(疾患概念)があるそうです。これは3-5mmの口内炎が1個から複数できて1-2週間で改善しますが、しばらくするとまた繰り返すという病気です。口内炎以外には希に陰部潰瘍を合併することもあるようですが、他の症状はありません。世界中にある病気ですが、中東、地中海沿岸、南アジアに多く、ほとんどの人が思春期頃に発症しますが、年齢と共に軽くなることが多いとされています。原因はよく分かっていませんが、口の粘膜における免疫の異常が関係していると考えられています。また食物アレルギーとの関係は認められておらず、ストレスにより悪化する事が多いようです。
発症した場合は、通常の口内炎治療に準じて塗り薬やパッチ剤を使用します。問題は、いったん良くなっても再発してしまうという点です。口の中を清潔にする、頬や唇を噛む癖があれば止める事が必要です。またビタミンB12が有効だという研究があります。B12を1日1000μg(マイクログラム)半年間服用すると74%の人が口内炎ができなくなったという報告がありますので、困っている方は市販のビタミンB12サプリで試してみてはどうでしょうか?
ただし前述したように、口内炎を繰り返す場合は専門の医療機関で診療を受けた方が良い病気もありますので、繰り返す場合は自分で判断せず医療機関を受診してください。