骨粗鬆症治療の重要性2 治療薬の副作用(顎骨壊死)について
骨粗鬆症の治療でもっともよく使われる薬に、ビスホスホネート製剤という種類の薬があります。
これまでの研究で、この薬を骨粗鬆症患者さんに使用すると椎体や大腿骨の骨折が減ることが分かっています。
一方、このビスホスホネート製剤には、希に顎骨壊死という副作用が起きることがわかってきました。顎骨壊死というのは、文字通り顎の骨が壊死してしまうという現象です。このため、一時はビスホスホネート製剤を使っている患者さんは歯科医院での治療を断られたりすることがありました。
この顎骨壊死がどのくらいの頻度でおきるかですが、日本国内ではまだ正式な報告はなく、海外では0.05-1%程度の人に起きるのではないかと言われています。つまり、頻度としてはかなり低い副作用と言えます。顎骨壊死はひとたび起こると厄介な副作用ですが、ビスホスホネートは前述したように骨粗鬆症の骨折予防には効果がある薬なので、注意しながら使った方が良い薬です。
では、どのような点に注意すべきでしょうか?
1. 経口のビスホスホネート製剤では、顎骨壊死の危険は低いと考えられます。一方、注射のビスホスホネート製剤は経口に比べると、抜歯をした際に顎骨壊死がおこるリスクがやや高いため、歯科治療の予定がある人は薬を使う前に治療を済ませる必要があります。
2. 内服のビスホスホネート製剤を使い始めて3年未満であれば、そのまま歯科治療を受けても問題ありません。3年以上服用している場合は、歯科治療の3ヶ月前までに服用を中止します。注射のビスホスホネート製剤を使用している場合も歯科治療が終わるまでは使用を休んだ方が良いと考えられます。
口の中が汚い、歯周病があったりすると顎骨壊死が起こりやすくなります。また、次回書きますが、高齢者の歯周病は肺炎など様々な病気の原因になるので、骨粗鬆症の治療薬を服用するしないに関わらず、普段から歯科医院で歯のメンテナンス治療を受けておくことが重要です。
顎骨壊死に関するポジションペーパー 日本口腔外科学会
骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2015年度版 日本骨粗鬆症学会