バイエル社によるパーキンソン病の幹細胞治療
製薬会社のバイエル社は、子会社がおこなったパーキンソン病に対する幹細胞治療の結果を発表しました。
幹細胞はiPSではなく、胚細胞から作成した多能性幹細胞で被験者は12名。移植後1年でオン時間は2.2時間増加し、オフ時間は1.9時間減少。PETという画像検査により移植した細胞が定着していることを確認しています。重篤な副作用はなく、問題となるようなジスキネジアもなかったと報告しています。
この治験について、詳しく説明すると
今回はフェーズ1という、最も初期段階の試験です。患者さんは全員、自分が本物の幹細胞を移植されていいることを知っています。ですから、効果についてもプラセボ効果が含まれていると考えられます。
胚細胞から作る幹細胞なので、iPS細胞ではありません。胚細胞は受精卵から発生が進んだ状態の細胞を用いますので、今のところ大量生産が困難です。
オン時間が2.2時間増えたというのは、どのくらいの効果なのでしょうか?この文献によると、すでに利用されている脳深部電極刺激術(DBS)やレボドパ/カルビドパ経腸用液療法(LCIG)と比べて、あまり変わらないようです。
今回のバイエル社の発表からは、幹細胞によるパーキンソン病治療もある程度の効果は期待できるかもしれません。ただし、その効果は驚くほどのものではなく、既存の治療法とあまり変わらない可能性があります。幹細胞治療はまだ始まったばかりですので、長期的な効果や安全性はまだ分かりませんし、治療法の改良によりさらに効果は上がる可能性があります。いずれにせよ、実用化まではまだ道のりは長く適応となる患者さんもそれほど多くはないでしょう。また患者さんが期待するようなパーキンソン病を根本的に治したり進行を止めるような治療ではありません(少なくとも現時点では)。
これを書いている時点で、京都大学のパーキンソン病に対するiPSの治験結果は、まだ発表されていません。