パーキンソン病の進行度を評価する
パーキンソン病は進行性の病気です。患者さんとしては(もちろん医師も)、どの程度進行しているのか知りたい、評価したいという気持ちが当然あります。
例えば、癌ならCTとかPET scanとか血液検査である程度は癌の進行を可視化して評価することができます。では、パーキンソン病の場合はどうでしょう?
まず臨床で使われるものに、UPDRSというスケールがあります。これは簡単に言うと、患者さんの体の動きや精神状態を医師が問診、診察しそれぞれの項目で点数を付けてスコア化するものです。ただ、専門医が使ってもある程度は主観が入りますので、血液検査やCTのような客観性にはやや欠けます。
画像検査としてDATスキャンというものがあります。本体はパーキンソン病かどうかの鑑別診断に使われる検査ですが、大きな病院だと進行期の患者さんの評価に使っているとこともあるようです。このDTAスキャンというのは、どういう検査なのでしょうか?
パーキンソン病は脳の中のドパミンが減る病気です。脳の神経細胞の中にはこのドパミンを輸送するドパミントランスポーターというものが存在します。DATスキャンは、このドパミントランスポーターがどのくらいあるかを可視化する検査です。脳の中のドパミンが減るとそれに比例してドパミントランスポーターも減りますので、このDATスキャンを用いれば、間接的に脳内のドパミン量が推定できます(ただし、ドパミンそのものを見ている訳ではなく、疾患によってはドパミンは減らないのにドパミントランスポーターだけ減る病気もありますので、そのような場合はDATスキャンでもドパミン量を推定できません)。
パーキンソン病を発症している場合、ドパミントランスポーターの量は発症前の半分以下になっていると言われています。発症後は緩やかに減少します。
上の図を見ていただくと、確かに経過とともにドパミントランスポーターの量は減っていきますがイメージとは少し異なるのではないでしょうか?
またDATスキャンでは画像の中で集積と呼ばれるドパミントランスポーターが集まっている部分をSBRという値で表しますが、これ自体はばらつきが大きく、例えば患者AさんのSBR値がBさんのそれより少なかったからと言って、必ずAさんの方が進行している(病状が重い)とは言えません。
DATスキャンはあくまで、最初の鑑別診断に用いる事が最も有用な検査であり、パーキンソン病の経過を一番よく示しているのは、患者さん自身の症状、運動合併症の有無などになります。