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パーキンソン病と痛み

[2021.04.14]

パーキンソン病の方は腰痛を主として、身体の痛みを訴える方が多くいます。パーキンソン病の教科書にも「痛み」はパーキンソン病の症状の一つと書かれていますが、たまに痛みを主治医に相談したところ「パーキンソン病と関係ないから整形外科を受診してくれ」と言われたという話を聞きます。ただ、こういう方が整形外科を受診しても、痛み止めと湿布を処方されて終わったり、「痛みはパーキンソン病が原因だから主治医と相談して」と言われて帰されたりすることもあります。

一番多いのが慢性的な腰痛ですが、急性発症の痛みのために病院の救急外来を受診する患者もいると教科書には書かれています。

ただ、パーキンソン病の痛みの原因はまだよく分かっていません。腰痛については、おそらく前傾姿勢であることが関係しているようです。パーキンソン病に限らず、中年以降になると腰痛持ちの方が多くなります(私も30代までは腰痛というものと無縁の人生でしたが、40代に入ってから波はあれども腰痛を感じる時間が多くなってきました)。パーキンソン病患者さんだけでなく、年齢とともに姿勢が前屈みになっていきます。こうした姿勢が腰痛の要因になっていると考えられます。

余談ですが、脳自体は痛みを感じない臓器です。麻酔無しで脳にメスを入れても、脳は痛みを感じません。イギリスでバイオリニストの脳外科手術をする際に、部分麻酔のみで手術をおこない手術中にもバイオリンを演奏してもらうというニュースがありました(脳の手術中にバイオリンを演奏、患者の左手を守るため 英病院)。これは、バイオリンを演奏するために必要な脳の重要な部位を傷つけないように確認しなから手術をするためです。

また、身体のどの部位の痛みであれ、痛みを感じているのは最終的には自分の脳なわけですが、パーキンソン病ではドパミンを補充する薬物療法により痛みが改善する場合があります。ウェアリングオフ現象がある場合に、薬効が切れる「オフ」時間に痛みが悪化することがあります。これは、脳の中でドパミンが不足することにより脳が痛みを感じやすい状態になっている可能性があります。パーキンソン病の脳内ではドパミン以外に、セロトニンという物質も不足しているので、こうした変化も痛みに関係している可能性があります。

治療ですが、パーキンソン病に限らず慢性的な痛みに対する治療は難しいことが多く、例えば打撲などの急性の痛みであれば痛み止めや湿布は比較的効果がありますが、慢性的な痛みの場合はあまり効果がありません。外来をしていると、鎮痛剤を長年服用している方にお会いしますが、こうした方も必ずしも薬が効いているとは言えないようです。

慢性的な痛みに対する特効薬はありませんが、まず運動は有効です。痛みを恐れて身体を動かさないと痛みはさらに悪化し悪循環をおこします。薬物療法としては、通常の鎮痛薬は効果が乏しいことが多く、抗うつ薬のデュロキセチン(サインバルタ)などを使うことがあります。ただデュロキセチンは、眠気などの副作用が出ることがありますしセレジストなどのパーキンソン病の薬とは併用が禁止されていますので注意が必要です。

 

 

 

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