パーキンソン病の幻視
パーキンソン病を長く患い治療薬を服用していると、幻視が見えることがあります。
通常、発症から数年経過しており、典型的な幻覚は「家の中に誰か人が見える」「絵や壁(床)の模様が動いて見える」「床に虫がいると思い、よく見たらゴミだった」といったものです。
このような幻覚は、薬の影響が大きく、シンメトレル(アマンタジン)やドーパミンアゴニスト、アーテン(トリヘキシフェニジル)といった薬剤は幻覚をおこしやすく、逆にレボドパはおこしにくいようです。
幻覚はほとんどの場合、屋内の、特にあまり明るくない場所で見えることが多く、時間帯も夕方以降に見える人が多数です。以前診ていた患者さんで、夜中にトイレに起きたときだけ床の模様が動いて見えると言われた方がいます。また、はっきりした幻覚が見える前に、「気配」のみを感じる人もいます。幻覚の種類は幻視がほとんどで、幻聴を訴える人はゼロではありませんが少数です。
薬の影響が大きいと書きましたが、パーキンソン病ではない人が上記の薬を長期間服用しても幻覚はほとんど出ません。パーキンソン病の幻覚は、パーキンソン病という病気そのものに治療薬が影響しておこります。
幻覚が出てもすぐに薬を中止する必要はありません。まず、幻視自体、慣れてしまうことがあります。最近、幻視のことを言われないので、「もう見えませんか?」と患者さんに訪ねると「見えますけど、慣れました」と言われることもあります。ただ、あまりにも華々しい幻覚だったり、あるいは見えている人が自分を襲うような妄想を伴っている場合は、幻覚を誘発しやすい薬を減量したり中止する必要があります。もちろん、こうした薬の減量や中止により、パーキンソン病の症状自体が悪化する可能性はありますので主治医との相談が必要です。レボドパは幻覚をおこしにくいので、代わりに増量することもありますが、レボドパを高用量で服用するとジスキネジアという不随意運動がおきやすくなります。
パーキンソン病と診断されて1年以内に幻覚が出る場合は、厳密に言うとレビー小体型認知症の可能性があります。