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認知症患者が歌により希望を得るということ

[2020.01.01]

認知症患者が歌により希望を得るということ
この記事を大まかに翻訳したものです。

Group Of Seniors Singing In Choir Together

マービン・ロフキスト氏は 53歳の妻のエレインと共に、ギビング・ボイス・コーラスで何百曲という歌を歌ってきました。しかしマービンに「好きな曲は?」と質問すると、「そういうことは記憶に問題のない人に聞いてほしいね」と答えます。彼は初期のアルツハイマー病なのです。同じ質問を妻のエレインにすると、彼女は次のコンサートで歌う予定のミュージカル「Carousel」の中の「You’ll never walk alone」を歌い出した。「たとえあなたの夢が困難にさらされても、心に希望を抱いて歩き続けて。あなたは決して一人で歩いているのではないのだから」。
彼女の歌声はかすれてしまい、自分を落ちかせるために歌うのを中断し、一息ついた後にこの歌の意義を説明してくれた「あなたが、アルツハイマー病とともに人生の旅を歩んでいくのであれば、この歌は一人で歩いているのではないということを思い出させてくれます」「歌は孤独を取り除き喜びをもたらしてくれます。それがギビング・ボイスから私が得ていることなのです。」
ギビング・ボイス・コーラスはマービンとエレインのように何百の認知症患者とその介護者に新たな目的と連帯感をもたらしている。
ギビング・ボイス・コーラスはアルツハイマー病の介護経験がある2人によって、認知症の介護者が支えられ居心地の良さを感じられる環境を作るために始められた。創設者は語る「認知症患者はしばしば引きこもり、コミュニティーからも離れてしまいます。音楽や歌は、認知症患者が自らの人生に参加する方法なのです。」
合唱団は当初はコミュニティーのボランティアを含む30人で始まったが、現在は180人まで規模を大きくしている。
「私達はオーディションをおこないませんし、どのような診断を受けているのか、どのような病期にあるのかを気にしません。」「この経験を楽しめる人であれば誰でも参加できます。ここは誰もが自分の場所を見つけられるところなのです。」「最初に始めたときは、患者さんたちが徘徊したり興奮したりするかもしれないと心配しました。しかし実際は逆のことがおこりました。彼らが自分の好きな歌を歌う時、そこには喜びと笑いがあります。それは特別なことなんです。」
2015年に発表された研究では、人が歌を歌う時、幸福を感じるオキシトシンホルモンが増加し、ストレスホルモンであるACTHは減少した。
メイヨークリニックのカセリ医師はこう述べます「軽度から中等度のアルツハイマー病では短期記憶が障害されるが、音楽に関する記憶はずっと後まで保たれています。」「このためアルツハイマー病の人が新しい曲を覚えたり、自分の言葉で歌うことが困難です。しかし彼らは、知っている曲を聞いたときはそれを思い出し、歌うことができます。」これはマービンにも当てはまります。「私は曲の歌詞を書き出すことはできませんが、曲を聞けば歌詞が口から出てきて歌うことができるのです。」
また発語と長期記憶は病期の後期まで影響を受けないため、ギビング・ボイス・コーラスのメンバーは人生の最後の数ヶ月まで活動ができる傾向があります。
このコーラスグループで歌うことはマービンにとっては趣味以上のものです。それは彼がアルツハイマー病と共に生きることを助けてくれるのです。「私は、辛い結末が待っている不治の病を患っています。私にとって病気のことを周囲の人と話すことは大事なことです。私が辛いときは、皆それを理解してくれますし、それにより私の負担は軽くなります。病期の重荷を消してくれるわけではありませんが、私が病気とともに生きることを助けてくれます。
毎週水曜日の朝、合唱団のメンバーはまず45分間のおしゃべりをし、その後にウォーミングアップの歌、90分のリハーサルをおこない最後はデイル・エバンスの「Happy Trail」で終わり、さらに1時間の社交の場で締めます。合唱団創設者のレナードはこう言います「この3時間以上の時間で参加者の態度の変化は明らかです。アルツハイマー病の人たちは、まず到着した時はぼんやりしているか少し混乱しています。しかし、ひとたび彼らが歌い始めると元の自分に戻るかのようです。その後、彼らはおしゃべりになり会話も弾みリラックスして集中することができるようになります。それは見ていて本当に驚きです。」
10週間ごとのセッションの最後に公開コンサートがおこなわれます。昨年6月彼らは「ボートのバラード」というオリジナル曲を歌い、それは家族を涙させたとエレインは言います。「この歌は海で一人でボートに乗っていることを歌っています。霧が出て波も立っていますが、霧が晴れるとあなたは周りにボートがいて自分が一人ではないことに気づきます。」「それは私達が現実に感じていることをうまく表現しています。この病気があっても私達は一人ではありません。他の人がいて私達は皆に囲まれているのです。」
マービンは付け加えます「まだ病気によって打ちのめされていないのなら、歌うことによって病気と戦うことができるんです。」

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