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パーキンソン病患者さんに腸内細菌を移植する治療

[2024.10.21]

読売新聞に「パーキンソン病患者の大腸に腸内細菌移植、国内初の臨床研究…順天堂大グループ」という記事が出ていました。内容は、進行期のパーキンソン病患者さんに健康な人の便から抽出した腸内細菌を移植して、その効果を見るというものです。臨床研究情報ポータルサイトにも、概略が掲載されています」。

パーキンソン病の原因はいまだ十分分かっていませんが、α-シヌクレインという蛋白質が原因という説が有力です。このα-シヌクレインは、まず腸管内で生産されそれが脳へ移行することによりパーキンソン病を発症するという仮説があります(パーキンソン病が腸から始まるといえる、これだけの証拠)。腸管内には腸内細菌叢という無数の細菌が生息しており、これらは体内の免疫など多くのことに関与していることが分かっていますが、パーキンソン病患者さんでは特定の腸内細菌が多い傾向があり、このことがα-シヌクレインの増加、パーキンソン病の発症につながっているという説があります。すでに名古屋大学が、世界中のパーキンソン病患者さんでAkkermansiaという腸内細菌が増えていることを発表しています。

薬で腸内細菌叢の組成を変えることは非常に困難です。そのため抗生剤でいったん腸内細菌を殺して、他の健康な人の糞便(腸内細菌)を移植するという治療法があります。これが今回の治験です。

すでに偽膜性腸炎という病気で健康な人の糞便を移植することによって、改善したという報告があります。

パーキンソン病でこのような治験をおこなう場合は、比較的初期の人を対象にして進行抑制を期待するのか、あるいはある程度進行した人を対象にして、症状改善や進行抑制を期待するのかの2つがありますが、今回は後者のようです。

一方、フィンランドで既にパーキンソン病患者さんを対象とした糞便移植の治験が行われていますが、効果が確認できなかったと報告しています。ただ、フィンランドの治験は初期の軽症の方から中等度を対象にしていますが、今回の順天堂大学の治験はそれよりもう少し進行した方を対象にしています。

いずれにせよ、腸内細菌と病気との関連は近年のトピックスであり、他にも様々な疾患において腸内細菌との関連が提唱されています。

Beneficial healthy intestinal bacterium.

 

 

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