メニュー

ALSの新しい治療薬

[2024.10.19]

筋萎縮性側索硬化症(ALS)の新しい治療薬として高用量メコバラミン(商品名ロゼバラミン)が認可されました。これは高用量のビタミンB12を定期的に注射するもので、治験によりALSの進行抑制、生存期間の延長が示されました(徳島大学からの発表)。

この薬は私が医師になったときにはすでに治験が始まっており(30年前!)、最終的には製薬会社ではなく医師が主導する形の治験で効果を証明し認可にこぎつけました。なぜここまで難産だったかと言うと、そもそもALSは難病中の難病で進行も比較的早いことが多く、薬の効果を証明することが非常に難しい病気です。動物モデルでは効果があっても、認可にこぎつけた薬はようやくこれで3つ目です。治験をおこなう場合でも、まず被験者はできるだけ早期で症状が軽い患者さんが選ばれます。それでも薬の効果を証明するのは難しく、30年で認可された薬はようやく3つめです。

ただ、今回は製薬会社がおこなった治験では十分な有効性を証明することができず、さらにそこから徳島大学の脳神経内科が医師主導で治験をおこない認可にこぎつけたわけで、関係者の執念が勝ち取った結果と言えます。

ビタミンB12をもともと末梢神経(手足の中を通っている神経)の修復を促進するといった神経保護作用は知られていましたが、なぜ高用量で投与するとALSに効果があるのかは、まだよく分かっていません。すでに認可されているリルゾール、エダラボンはいずれもALSのメカニズム(病態機序)から効果があると推定された薬物です。ALSでは運動ニューロンという神経細胞が死んでいくのですが、この過程にグルタミン酸やフリーラジカルという物質が関与していることが分かっています。リルゾールはグルタミン酸を、エダラボンはフリーラジカルを阻害する薬です。これに対してメコバラミンは、ここまで具体的なALSに対する作用機序は分かっていません。

であれば、メコバラミンはALS以外の神経疾患においても神経細胞の保護作用を発揮するかもしれません。例えば急性期の脳梗塞に投与して神経細胞死を防ぐことができないかや、パーキンソン病に投与して進行抑制作用がないか、といった治験も将来行われるかもしれません。

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME