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福島医大が発表したパーキンソン病の新薬開発について

[2025.12.12]

先日、福島県の新聞にこんな記事が出ていていました。

パーキンソン病、根本治療へ新薬 福島医大、26年度から治験

面白い研究だなと思いましたが、その後、患者さんからも質問を受けたので簡単に解説します。

まず、パーキンソン病はなぜ発症するのかということですが、脳内の神経細胞の中にαシヌクレインという蛋白質が蓄積してレビー小体という塊を作ることが原因だろうと考えられています。このαシヌクレインは、いきなり脳内にたまるのではなく、最初は消化管の神経や嗅神経に蓄積したものが脳内に伝播しドパミンを作る神経細胞に溜まり、(人によっては)さらに脳内の広い範囲に伝播していきます。

ですから、このαシヌクレインが蓄積したり伝播することを防げれば病気の進行も遅らせる可能性があり、世界中の研究者がその方法を研究しています。

福島医大の川畑先生達はFABP3という蛋白質に以前から着目しており、αシヌクレインが細胞内に取り込まれるためには、このFABP3が重要であることを明らかにしています。FABPというのは脂肪酸を細胞内で輸送するための蛋白質です。

川畑先生達は、αシヌクレインが細胞内に取り込まれるためには、このFABP3が必要であることを明らかにしています。また先天的にFABP3ができないマウスを作ると、αシヌクレインは細胞内に取り込まれません。FABP3は、ドパミンと関連した細胞の近くに存在するため、なぜパーキンソン病ではドパミン産生細胞だけが減っていくのかということもFABP3の関与である程度説明がつきます。

このFABP3の働きを阻害する薬を作ってパーキンソン病のモデルマウスに投与すると、運動症の改善や神経細胞死にブレーキをかけられることを確認しています。

パーキンソン病患者さんの血液、髄液ではFABP3が増えており、発症前診断に応用できる可能性もあります。

来年度から治験が始まるそうなので、いずれ福島医大から何らかのアナウンスがあるかもしれません(私は記事を紹介しただけですので、当院に聞かれてもお答えできません)。

川畑先生の予想が正しければ、このFABP3阻害薬によりパーキンソン病の進行を抑えることができるかもしれません(そのような進行を抑える薬はまだ存在していません)。ただ、減った神経細胞を戻すことはできないので、もし投与するにしてもできるだけ早い段階で投与することにより効果が期待できます。ただ、ある程度病状が経過した場合でも、将来の認知症発症予防などは期待できるかもしれません。

 

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