片頭痛患者さんは認知症になりにくい(かもしれない)という研究
オランダの研究グループより、片頭痛の既往がある人は、片頭痛がない人に比べて認知症を発症するリスクが30〜40%低いという、非常に興味深い研究結果が発表されました(PMID: 42026653)。片頭痛を抱えていることは、将来的に認知症になりにくいというメリットに繋がっているのかもしれません。
7,000名以上を対象としたオランダでの大規模調査
この研究では、アムステルダム在住の中高年7,266名を対象に詳細なインタビュー調査を実施しています。対象者の平均年齢は66.1歳で、そのうち15%の方が片頭痛を患った経験を持っていました。調査開始時点では全員に認知症の症状はありませんでしたが、その後の平均9年間にわたる追跡調査の結果、片頭痛の罹患歴がある人の方が、認知症やアルツハイマー病を順次発症する割合が明らかに低いことが判明しました。
累積発症率から見る片頭痛と認知症の相関関係
上のグラフは、横軸が調査開始からの経過時間、縦軸が認知症を発症した累積人数および死亡した累積人数を示しています。赤の点線(片頭痛の罹患歴がある方)は、赤の実線(罹患歴がない方)と比較して、一貫して認知症の発症率が低く推移していることが見て取れます。
アルツハイマー病の発症リスクの大幅な低下
こちらの図は、アルツハイマー病に限定して分析した結果です。やはり片頭痛の経験がある方の方が、発症率が低くなっています。今回の報告を数値でまとめると、片頭痛がある人は、ない人に比べて以下の通り発症率が低下していました。
| 認知症全体 | 発症率が30%低下 |
|---|---|
| アルツハイマー病 | 発症率が42%低下 |
過去の研究結果となぜ違いが生じたのか
今回の研究では、なぜ片頭痛があると認知症になりにくいのかというメカニズムまでは特定されていません。これまでの研究では「片頭痛患者は認知症を発症しやすい」という、今回とは真逆の結果が報告されることもありました。本研究チームは、過去の調査が今回と異なる結果になった要因として、以下の3つの課題を挙げています。
| 観察期間の短さ | 片頭痛は若年層に多く、認知症は高齢層に多いため、短期間の観察では不十分である。 |
|---|---|
| 対象者の偏り | 病院へ通院しているような、比較的重度の片頭痛患者に調査が偏っていた。 |
| 調査手法の問題 | 認知症を発症した人を起点に過去を振り返る「後ろ向き調査」であったため、情報の精度に課題がある。 |
片頭痛が持つ遺伝的なメリットの可能性
片頭痛は遺伝性が強い病気として知られています。これまで、なぜ人間にとって厄介なだけの苦痛をもたらす遺伝子が淘汰されず、現代まで多くの人に受け継がれているのかという大きな謎がありました。しかし、片頭痛を持つことが将来的な脳の保護に繋がるのであれば、それは生物学的な何らかのメリットとして存在し続けているのかもしれません。

