PCR検査で陰性なら大丈夫?
現在、新型コロナウイルスの感染者が急増しており、先月から都内でもPCR検査を受ける人の数も急増しています。メディアが報じているように、2000〜3000円で検査を受けられる検査センターでは予約が集中しキャンセル待ちの状態だそうです。
ただPCR検査については、多くの人が十分理解されていないようなので少し詳しく説明しておきたいと思います。
一番の問題は、「PCR検査で陰性=新型コロナウイルスには感染していない」ではない、ということです。年末には、「PCR検査を受けて陰性を確認してから帰省したいと思います」とインタビューに答える人がよくテレビに出ていました。しかし、これは間違いです。
コロナウィルスに感染してもすぐに症状が出るわけではありません。平均して4日後、長い人では感染してから2週間後に発症することがあります(追記:オミクロン変異では感染から発症までの期間はこれまでより短く3日程度のようです)。この感染してから発症するまでの間を潜伏期間と呼びます。症状がないのに念のためPCR検査を受けたいという方は、自分がこの潜伏期間にあるかどうかを知りたいということになります。
しかし、この潜伏期間の間にPCR検査をしても感度は非常に低くなり、感染者の半分程度かそれ以下しか検査で陽性にならないと言われています。ですから、検査で陰性だったので実家に帰ろう、帰省先で同級生と飲み会だ、ということをしていると本人が帰省中に熱を出し、さらに一緒に飲みに行った同級生が感染するということが起こりえます。
また、風邪症状があり医療機関を受診しPCR検査を受けて、陰性だったとします。その場合、その人は新型コロナウイルスに感染していないと言えるのでしょうか?これもそうではありません。症状がある人にPCR検査をおこなっても10-20%程度は見逃しが発生すると考えられます(これを偽陰性と言います)。ですから、検査で陰性だからといってすぐに職場に行くと、同僚に感染させてしまうかもしれません。
「検査の結果が100%じゃないのなら、どうしたら良いんだ?」と思われる方もいるでしょう。一番確実なのは、検査をするしないに関わらず十分な期間、家で休養を取りできるだけ人と会わないようにすることなのです。
新型コロナウイルスに感染して発症すると、そこからおおよそ8日、長くても10日で他人に感染させることはなくなります。ですから、発熱や風邪症状があった場合、検査をするしないではなく、この期間家でじっとしていることが、一番他人に感染させない方法なのです。
もちろん、発症時に状態が良くない人、基礎疾患がある人、高齢者などは新型コロナウイルスに感染した場合は重症化のリスクがありますので、積極的に検査をした方が良いですし、嗅覚・味覚障害があるような人も検査はしたほうが良いでしょう。ただ、こうした場合の検査は、新型コロナウイルスに感染しているかどうか(陽性かどうか)を確認するためにおこないます。PCR検査というのは、陽性かどうかを調べるための検査であり、陰性であることを調べるための検査ではありません。
不安だからPCR検査を受けておこう→陰性だったからほっとした、ちょっと体調が悪いけど仕事には行かないと、友達と食事の約束があるんだった、帰省しても大丈夫等など、こうした誤解に基づく行動が感染を拡散している一因でもあると思います。
PCR検査で陰性であることが、自由に行動して良いというお墨付きを与えているかのような現状が非常に危険です。
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