認知症の診断
認知症の診断というと、MRIやCTで脳を撮影するというイメージを持たれている方が多いと思います。
患者さんに脳のMRIの説明をしていると、「認知症ありますか?」と聞かれることがあります。これは、「脳に萎縮がないですか?」という意味なのだと思います。
確かに、認知症では脳の萎縮が見られることが多いのですが、実は初期の認知症では必ずしも萎縮ははっきりしないことがあります。また高齢の方では、脳の萎縮が明らかであっても、2ヶ月前の血液検査の数字を覚えていらっしゃるようなしっかりした方もいます。
認知症の診断に必要なのは、まず問診です。いつ頃からどういう症状があり、具体的に生活や仕事に支障が出ているのか?本人は自覚しているのか?あるいはご家族は気づいているのか?また普段のんでいる薬や、これまでにかかった病気の情報も重要です。
レビー小体型認知症なのでは、認知症と並行して動作の緩慢や転びやすいといったパーキンソン症状という症状が見られることがありますので、身体診察も重要です。
認知症の診断では、長谷川式というテストをおこないます(他にもミニメンタルステート検査など、いくつかの検査があります)。日時を聞いたり、簡単な計算をしてもらったり、記憶力のテストをおこないます。認知症の診断には重要な検査ですgあ、この検査も初期の場合は必ずしも点数が低くなりません。このような場合、複数の検査を組み合わせておこなうことがあります。
血液検査も診断には重要です。甲状腺ホルモンというホルモンが少なくなる病気がありますが、認知症と似た症状を引き起こします。基本的にはホルモンの不足により起こっているので、薬による補充により良くなります。
MRIやCTも認知症の診断には必須の検査です。ただし、前述したように初期の方であれば、必ずしも脳の萎縮ははっきりしません。このような場合に、脳血流シンチという検査をおこないます。かなり大きい病院でないとできない検査ですが、脳の血流を調べることにより脳の機能低下を見分けることができます。
色々検査を尽くしても、認知症かどうかはっきりしない場合がありますが、これには理由があります。
ある日、突然脳梗塞や脳出血をおこさない限り、健康な人が突然認知症になることはありません。つまり、段階的に進行し認知症という状態に至りますが、この中間の状態(健康な状態が白色で認知症が黒色なら灰色の状態)があります。これを軽度認知障害と呼びます。軽度認知障害の人がすべて認知症に移行するわけではありませんので、このような状態であれば定期的に経過を見ていくということになります。