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MAO-B阻害薬(エフピー、アジレクトなど)について

[2022.06.25]

今回は少し専門的なことを書きます。内容についても、あくまで私の個人的な見解です。

パーキンソン病の治療薬にMAO-B阻害薬という種類の薬があります。現在、日本では3種類のMAO-B阻害薬、セレギリン(エフピー)、ラサギリン(アジレクト)、サフィナミド(エクフィナ)が使用可能です。

この薬が開発された経緯ですが、もともと結核の薬の治験がおこなわれた際に結核は良くならないのに薬を投与された患者が元気になったため、その原因を調べるとMAOという酵素が発見され治験薬がMAOの働きを阻害していることが分かりました。その後の研究でMAOにはAとBの2つがあり、MAO-Bがドパミンの分解に関与していることも分かりました。そこで、MAO-Bの働きを阻害すれば脳内でドパミンの分解が遅れてよりドパミンが長く効果を発揮するのではないかと考えられ、MAO-B阻害薬が開発されています。

MAO-B阻害薬には実験室レベルで神経細胞死を予防する効果があることが分かっており、患者さんに投与した場合にパーキンソン病の進行を抑制するのではないかと期待され、様々な治験がおこなわれました。確かにMAO-B阻害薬を服用していた患者さんの方が服用していない人より症状の悪化が少なかったのですが、これがはたして進行を予防した効果なのかどうかは結論が出ていません。

MAO-B阻害薬がパーキンソン病の患者さんに使用される状況というのは、多くの場合以下のいずれかだと思います。

  1. 最初の治療としてレボドパを使いたくない(レボドパの使用を先に延ばしたい)時の初期治療として(ただし、レボドパを使用していない人に使えるのはセレギリン、ラサギリンのみです)。レボドパの前にMAO-B阻害薬を先に使うことにより、レボドパの使用を先に延ばすことができる可能性があります。
  2. ウェアリングオフ現象が出てきた時に、オン時間を延ばしてオフ時間を短くするため。MAO-B阻害薬は脳内のドパミンの分解にブレーキをかけることにより、ドパミンを長持ちさせる効果があります。ただし、ドパミンの効果を増強させるためにジスキネジアが出やすくなります。
  3. 証明はされていないが、前述のような進行抑制効果を期待して。
  4. 昼間の眠気軽減を期待して。

1番ですが、確かに理屈はそうなのですがMAO-B阻害薬単独の効果は非常に小さく、第一選択薬として投与してもなかなか患者さんの満足度は得られません。レボドパの使用を先送りしたいのであれば、ドパミンアゴニストを先に使用した方が現実的のように思います。

2番ですが、確かにオフ時間の短縮効果はありますがジスキネジアが出やすくなるのが厄介です。ジスキネジアはいったん出現すると、MAO-B阻害薬の減量・中止が必要になることが多くレボドパもそれ以上の増量が困難になります。パーキンソン病治療の長期目標の1つが、このジスキネジアの出現をいかに先送りするかということですが、MAO-B阻害薬はジスキネジアの出現を先送りさせることはできません。

3番ですが、進行抑制効果というのは仮にあったとしても実感できるほどではないと思います(そもそも進行抑制効果というのは目に見えづらいですが)。

4番については、セレギリンには覚醒効果があることが報告されているので昼間の眠気軽減を期待して投与されることがあります。ただ逆に言うと、夜が眠れなくなったり不眠が悪化する可能性もあります。実際に昼間の眠気を訴える患者さんに投与しても、眠気の自覚症状が改善することはあまりありません。

では、現在ある3種類のMAO-B阻害薬のどれが一番良いのでしょうか?これは薬同士を比較した研究があまりないためはっきりしたことは言えません。ただ、セレギリンとラサギリンの比較をした試験はいくつかあり、それによれば両者の効果はほぼ同等のようです(PMID: 25010617, PMID: 32710141, PMID: 28550482) 。また3種類のMAO-B阻害薬を比較したメタ解析ではセレギリンが最も効果があったと報告しています(PMID: 29847694)。

ただ、サフィナミド(エクフィナ)については、ジスキネジアを起こしにくい、またパーキンソン病に関連した痛みを和らげる作用がある可能性が報告されています(34478245,31594253) 。

効果の違い以外に価格の問題があります。セレギリンは3剤の中では最初に出た薬ですでにジェネリックが存在します。

セレギリンのジェネリックの場合、標準量の1日薬価が約300円、ラサギリン(アジレクト)はジェネリックがないので、標準量の1日薬価が953円と薬3倍です。サフィナミド(エクフィナ)も930円とラサギリンとほぼ同等です。特に難病指定を受けていない軽度から中等度の方にとっては高い薬価は大きな負担になります。

少なくない医師が、効果が変わらないにもかかわらず薬価の高い新薬を処方する傾向があります。これは、何となく新薬のほうが効きそうだという思い込みや、新しい薬は製薬会社が医師に対して処方を積極的に働きかけるのに、ジェネリックが出たような古い薬ではそのようなことがないのが影響していると思います。新しい薬の方が効果や副作用の点で古い薬よりメリットがあればそちらを処方する意義があると思いますが、MAO-B阻害薬についてはそこまでの差はないように思います(なので、私自身がMAO-B阻害薬を処方する際はセレギリンを処方しています)。ただし、セレギリンを服用していて、不眠症があったり痛みが強い人はサフィナミドに変更することもあります。

 

 

 

 

 

 

 

 

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