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自治医大が行うALSの治験について(簡単な解説)

[2023.06.03]

自治医科大学がALS(筋萎縮性側索硬化症)患者さんに対する治験をおこなう予定です(ALS 遺伝子治療の治験始まる 患者への投与は国内初)。治験というのは新しい治療法(薬)の安全性や効果を患者さんに試す計画のことを意味しています。自治医大のHPを見ると、この治験は参加希望者多数のため、現在は新規の募集を停止しています。

今回の治験は、ADAR2というたんぱく質を作る遺伝子を特殊な方法で患者さんの脊髄に送り込むというものです。

まずALSの患者さんではADAR2というたんぱく質の働きが低下しており、このために神経細胞が脆弱な状態になり神経細胞死が誘発されるという仮説があります(ADAR2の働きが低下する原因は分かっていません)。そのため、患者さんの神経細胞の中で正常なADAR2を増やせば症状の進行を抑えられる可能性があります。

実験室でADAR2というたんぱく質を人工的に合成して、患者さんに服用させたり点滴しても、このたんぱく質を病気がおこっている脊髄の神経細胞に送り届けることはできません。そのために、今回はウィルスベクターという方法を用いています。ADAR2というたんぱく質の設計図となる遺伝子をアデノ随伴ウイルスというウィルスの中に入れます。このウィルスを患者さんの腰から髄腔というところに入れて首の脊髄付近まで運びます。後はこのウィルスが神経細胞に取り込まれることにより、ウィルスが運んだADAR2遺伝子によって神経細胞の中で正常なADAR2たんぱく質が作られるという仕組みです。

自治医大では、同じウィルスベクターを使ったパーキンソン病の治験も発表しています。

もちろんこの治験が上手くいくと良いのですが、治験というのは何段階もあります。今回の治験はその中では最初の段階のもので、この治験の結果だけですぐに薬が実用化されることはないと思います。ALSの発症メカニズムは非常に複雑だと考えられます。その中でADAR2が重要な役割を果たしている可能性はありますが、この治療だけでどこまで効果があるかは分かりません(だからこそ、治験を行うわけですが)。

こうした難病に対する治験は、ネットで探すと見つかります。また患者の会に入っていると、情報が入ってきやすいと思います。初期段階の治験は募集人数が少ないので、治験に参加したい方はこまめに情報を探されると良いと思います。

 

 

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