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パーキンソン病の震え

[2023.01.04]

手や脚が震える振戦は、パーキンソン病の有名な症状の1つです。ただ、すべての患者さんに診られる訳では無く30-40%の患者さんは振戦が見られません。

振戦は、じっとしている時に起きる安静時振戦と、字を書いたりコップを持ったり何か動作をする時に起きる動作時振戦、腕や脚を一定の位置の保持した時に起きる姿勢時振戦の3つがありますが、パーキンソン病の振戦は主として安静時振戦です。

患者さんによっては、この振戦を非常に気にされ「何とかして欲しい」と相談に来られる方がいます。また振戦を強く訴える方は圧倒的に女性が多いのですが、この理由は分かりません。

そもそも、振戦は薬ではあまり良くなりません。良くなってもせいぜい30%くらいで、半分以下になることはありません。

振戦に最も効果があるのは抗コリン薬で、脳神経内科医がよく使うのはトリヘキシフェニジル(アーテン)です。その次がプラミペキソール(ビ・シフロール、ミラペックス)です。抗コのリン薬は振戦以外の症状にはまったく効きません。他院で「抗コリン薬は認知症になる」と言われて使用をためらう方がいます。確かに、抗コリン薬は脳の中で記憶や認知機能に関係しているアセチルコリンの働きを阻害します。ただ、75歳未満で認知機能に問題がない方は、抗コリン薬を服用してもまず問題ないと思います。パーキンソン病治療薬の副作用や罹病期間が長い方で幻覚がある方がいますが、このような人では抗コリン薬により幻覚が悪化することがあります。万一認知機能に影響があったとしても抗コリン薬を中止すれば元に戻りますしそのまま認知症になるとうことはありません。プラミペキソールは認知機能に影響は与えませんが、眠気が出やすい薬です。

まパーキンソン病が進行するとますます振戦が悪化すると思っている方が多いのですが、これは誤解です。振戦をもっとも訴えるのは初期の患者さんです。パーキンソン病の症状はたくさんありますが、長い目で見るともっとも問題になるのは無動です。声や書字、歩幅など体の動きが全体に小さくなり遅くなりますが、これを無動と呼びます。これに対して振戦は体の一部が過剰に動く症状ですが、長い目で見ると進行により体の動きが少なくなっていくため、振戦も減ると考えられます。もちろん発症から5年、10年経過しても振戦がある人はいますが、そういう人でも振戦を一番困る症状だと訴えることはほとんどありません。

 

どうしても振戦がひどく薬で治まらない場合はMRIガイド下収束超音波治療(FUS)という治療がありますが、これもかなりひどい振戦でないと適応はありませんので、それ以外の方は症状と付き合って行くしかないでしょう。

 

Close Up Of Senior Man Suffering With Parkinsons Diesease

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