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パーキンソン病の原因(2)

[2019.12.23]

パーキンソン病患者さんは、発症前から便秘や嗅覚が低下する人が多いことが分かっています。以前はこの理由が分かっていませんでしたが、最近の研究では、腸を動かす神経や嗅覚を伝える神経が障害されていることが分かってきました。つまり、まず腸管の神経や嗅神経が障害され、その障害が脳に伝播しパーキンソン病を発症するのではないかという説が出てきました。では、この体内で病気を伝播する犯人はなんなのでしょうか?現在、この「犯人」はαシヌクレインというタンパク質であると考えられています。パーキンソン病患者さんの体を死後に調べると、障害されている神経細胞にこのαシヌクレインが溜まっています。特に脳の中ではαシヌクレインが溜まって、レビー小体という塊を形成しています。1913年に、フレデリック・レビーという人がパーキンソン病患者の脳の神経細胞にタンパク質の塊があることを発見し、これがレビー小体と名付けられました。後に、このレビー小体の構成成分がαシヌクレインというタンパク質であることが判明しました。
生前にパーキンソン病を発症していない人の体を死後に調べると、腸管の神経や嗅神経などからこのレビー小体が見つかることがあります。こうした人は、パーキンソン病発病の前段階にあったと考えられます。つまりレビー小体が脳内に伝播する前に、別の理由で亡くなったと考えられるわけです。また最近の研究では、若い時に胃潰瘍の治療のため腸管の神経を切除した人は、切除していない人に比べ、年をとってからパーキンソン病になりにくいことが分かりました(最近は胃酸を抑える良い薬があるためこうした手術はおこなわれませんが、昔は胃酸の分泌を抑えるため神経切除が行われていました)。また盲腸を若い時に切除した人は、やはり年をとってからパーキンソン病になりにくいと報告されています。つまり、まず腸管(盲腸)にαシヌクレインがたまってレビー小体を形成し、それが腸管の神経を伝わり脳へ伝播しパーキンソン病を発症するのではないかという仮説が現在提唱されています。最初にαシヌクレインが溜まる場所が腸管や嗅神経(鼻)であることから、外部からの因子が鼻や口から取り込まれ、それが引き金となり嗅神経や腸管の神経にαシヌクレインが溜まるのではないかとも考えられています。これは興味深い仮説ですが、今の所その外因子が存在するのか、存在したとして何であるのかはまったく分かっていません。

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