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尿道カテーテルのトラブル

[2021.04.01]

多くの神経難病(や一部の脳血管障害)では病状が悪化すると、自力で排尿ができなくなります。これは単純にトイレに自分で行けないという話ではなく、膀胱に尿がたまっていても出せなくなる状態です。なぜ、このようなことがおこるかと言うと、膀胱にある程度尿がたまると、その情報が脳に伝わり尿意を感じます。脳が「おしっこを出して良い」と膀胱に命令しその指示が伝わると膀胱が収縮し排尿がおきます。つまり、膀胱をコントロールしている脳神経が正常に働いていないと、いくら膀胱に尿がたまっても出なくなります。当然、尿がたまりすぎると苦しくなりますし、さらに悪化すると尿が腎臓に逆流して水腎症という状態になったり、尿路感染症を併発したります。

ここまで来ると、薬では改善が難しく導尿が必要です。導尿とは柔らかいカテーテルというチューブを尿道に挿入し膀胱にたまっている尿を外に出す方法です。導尿には、決まった時間にカテーテルを挿入しその都度尿を出す間欠的導尿と、カテーテルをずっと入れっぱなし(留置)する2通りがあります。可能であれば前者の間欠的導尿が望ましいのですが、脳神経疾患の方は細かい動作が不自由なことが多く自分で間欠的導尿ができる方はあまりいませんので、結果的にはカテーテルを留置することが多くなります。カテーテルを留置した場合は、その先に採尿バッグというものをつけて、尿がそのバッグ内に溜まるようにします(ある程度溜まったら、バッグからトイレに流します)。

通常、このカテーテルの交換は2-4週間に1回なのですが、患者さんによってはすぐに(1週間以内)カテーテルが閉塞してしまう方がいます。こうした方の尿をみると、浮遊物が多く混濁が強いことが多いです。昔は、カテーテルの先から生理食塩水を膀胱内に入れて定期的に洗浄していましたが、現在は、この膀胱洗浄は効果が乏しいため行われていません。カテーテルの直径を太くしたりもしますが、これも経験的にはあまりうまくいきません。

このような方に対して、何かすごく良い方法というのはないのですが、私自身がおこなっているのは

  1.  しばらく抗生剤を投与する。教科書には抗生剤の投与はあまり意味がないと書かれていますが、抗生剤を投与すると少し閉塞がましなることがあります。
  2.  カテーテルをシルバーコーティングされたものに変える。シルバー(銀)は抗菌作用があり、閉塞しにくい利点があります。ただし、通常使われるシリコンコーティングに比べ少し高価なのが難点です。ただ、交換回数が減れば、結果的には安上がりになります。

排尿障害というのは、脳神経疾患ではよく見られる症状の一つで、かつ薬物による治療が難しい症状です。カテーテルの留置も閉塞や感染などトラブルが多く、患者さんの日常生活の大きな妨げになります。今回は、カテーテルの閉塞ということについてのみ書いてみました。

 

 

 

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