メニュー

認知症の方の考えを尊重するということ

[2020.06.12]
認知症を発病すると、周囲からすると不可解な言動になったりします。例えばお風呂に入らなくなったり、服や引き出しの中のものを全部出してしまったりすることは珍しくありません。
こうなると家族も、介護ホームに入ってもらった方が安心だと思うようになりますが、多くの場合、患者さんはホームに入らず自宅にとどまることを希望します。家族が「お母さん、そんなこと言ったって食事だってコンビニのお弁当しか食べてないし、お風呂だって入ってないし薬もちゃんと飲んでいないでしょう?」と理詰めで説得しても、本人は頑なに拒否することが珍しくありません。

認知症の方の考えは確かに認知機能の低下の影響を受けているので、普通に考えればおかしい言動があり、周囲から見れば「なぜこんなに頑固になるのか?」と思うこともあります。以前、私が診ていた男性は、ゴミ屋敷のような家で一人暮らしをしていました。トイレに行くのも間に合わず、部屋の中で失禁してしまうため部屋に尿臭がしていましたし、そのうち立って歩くこともできなくなりましたが、それでも頑として病院に行こうとはしませんでした。糖尿病のためインスリンをうっていましたが、食事もお惣菜パンのようなものしか食べませんでした。こういう人は、誰が見ても病院かホームに入った方が良いとは思うでしょう。しかし、「絶対行かない」と言い張っている人を無理矢理引きずって、ホームに入れることはできません。

誰しも、年をとると判断能力が低下することがあります。どこからが「年齢相応」で、どこからが「判断力なし」なのか明白な線引きは難しいです。もちろん、私もこれまでには、認知症の患者さんのために後見人の診断書を書いたり、本人が100%理解、同意しているとは言えない状態で認知症病院に入院させたことはあります。

ただ、例え認知症であっても本人の意志をできるだけ尊重するというのが原則だと思います。誰しも、住み慣れた自分の家を離れるのは嫌なはずです。極論ですが、お風呂に入らなくても死ぬことはありません。誰かが清拭するという手はあります。薬だって、よく見れば減らすことができたり、必ずしも毎日のまなくてもよい薬もあります。
認知症を発病する前の人格と、発病後の人格は連続したものである筈です。であれば、大変ではありますが、まずは本人の意見を尊重することが重要だと思うのです。

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME