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パーキンソン病とレビー小体型認知症

[2020.10.04]
患者さんから「最初に診察を受けた医師からはパーキンソン病と言われたのに、次に受診したところではレビー小体型認知症と言われたが、どちらが正しいのですか?」と質問を受けることがあります。実はパーキンソン病とレビー小体型認知症は兄弟関係にあるような病気で、患者さんによっては厳密に区別することが難しい方もいます。もともとレビー小体型認知症は日本の小阪憲司先生が1976年に最初に報告した病気です。

パーキンソン病患者さんの脳にはレビー小体という蛋白質の塊が蓄積しており、その蛋白質というのはαシヌクレインという物質です。通常、パーキンソン病ではドパミンを作る細胞が存在している黒質という部位にレビー小体が多く見られますが、レビー小体型認知症では黒質だけでなく大脳皮質など脳の広い範囲にレビー小体が存在します。このレビー小体が脳内に広く存在することより小阪先生は「びまん性レビー小体病」と命名しましたが、その後の国際会議で「レビー小体型認知症」という名称が正式に決定されました。つまりパーキンソン病とレビー小体型認知症の違いというのは、レビー小体という蛋白質の塊(αシヌクレイン)が脳の一部に限定しているのか、あるいは広範に存在するかが違うのです。

レビー小体型認知症はパーキンソン病に比べると発症年齢が遅く60~80歳代に目立ちます。レビー小体型認知症の最も大きな特徴の一つは、明瞭な幻視が発症早期より認められるということです。パーキンソン病でも幻視は出ますが、発症後3年以内に出ることはほとんどありません。またレビー小体型認知症では、意識がしっかりしている時(しゃんとしている時)と、ぼーっとしていたり眠気が強くぼんやりしている時の差が非常に大きくなります。日毎の違いだけで無く、1日のうちでも違いが大きくなります。パーキンソン症状は、典型的なパーキンソン病とほとんど変わらないくらいに出ている人もいれば、あまり目立たない人もいますが、レビー小体型認知症では安静時振戦は希です。レビー小体型認知症の患者さんは薬に対する過敏な反応を示すことがあり、市販の風邪薬の中に含まれている抗ヒスタミン成分で幻覚が悪化したり、レビー小体型認知症の治療薬であるドネペジル(アリセプト)でも、副作用であるイライラなどが出やすい場合があります。レビー小体型認知症の症状の個人差はパーキンソン病以上に強い印象があり、前述した認知機能の変動やパーキンソン症状、薬に対する過敏性も患者さんによって異なります。症状の進行も、非常に緩やかな方もいれば、数ヶ月で歩くことがかなり困難になり受診される方もいます。

当初、パーキンソン病と診断され何年もパーキンソン病として典型的な経過をたどっていたのに、あるところから急に幻視、認知機能の変動などの症状が前面に出てきて病状としてはレビー小体型認知症に良く当てはまるような経過をたどる方もいます。こういう方の場合は、おそらくは黒質に限局していたレビー小体が広範に脳内に拡がることにより、パーキンソン病からレビー小体型認知症の病態へ移行したと考えられます。
最初からレビー小体型認知症と診断された方と、最初はパーキンソン病だったのに途中からレビー小体型認知症の病態に移行した方の脳を死後に比較しても、大きな違いは見られません。このような理由から、レビー小体型認知症とパーキンソン病は厳密に線を引くことは難しい連続した病態と考えられます。
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