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コロナウィルスに対する免疫

[2020.06.08]
前回の続きです。
最近、「自分は知らない間に新型コロナウィルスに感染しているから、もう大丈夫」と言う方が増えているようです(私の周りにもいます)。こういう方に話を聞くと、「1月に熱が出て調子が悪いことがあったが、インフルエンザではないと言われた。あのとき、コロナウィルスに感染したのだと思う」と言われます。

「私きっとコロナ流行前に感染していたと思う」病が増殖中

こういう方が増えてくるのは、やはりこうした異常事態になった事に対する心理的な反応なのではないでしょうか?

前回、抗体検査をおこなってIgGが検出された場合は、新型コロナウィルスに対する免疫があるということになりますが、現在流通している簡易キットの信頼性は低いと書きました。
それなりにきちんとした研究として、神戸中央市民病院が外来患者さん千人に抗体検査をしたところ、3%に抗体が見つかったそうです。

外来患者3%に抗体 感染者推計はPCRの600倍

これはあくまで病院を受診した人なので一般の人ではどの程度が分かりませんが、少なくとも90%以上の日本人は新型コロナウィルスに対する抗体はないようです。

人間の免疫には液性免疫と細胞性免疫の2つがあります。免疫というのは身体に侵入してきた外敵(細菌やウィルス)を排除する仕組みなので、軍隊に例えるとすれば空軍と陸軍のようなものかもしれません。免疫にはリンパ球というものが重要な役割をはたしていますが、液性免疫はB細胞、細胞性免疫はT細胞というリンパ球が関係しています。抗体はB細胞が作るため液性免疫に関係しています。
最近、海外で、新型コロナウィルスに感染したことがない人の血液を調べると、抗体はないけれどコロナウィルスに反応するT細胞を持っている人が30-50%程度いると報告されました。つまり、液性免疫はないけれど、コロナウィルスに対する細胞性免疫がある人がいる可能性があります。

もともと、コロナウィルスはありふれたウィルスで風邪の原因になるようなウィルスです。新型コロナウィルス(SARS-Cov-2)の構造(遺伝子)は既存のコロナウィルスにかなり似ています。ここからはあくまで推測ですが、過去に(普通の)コロナウィルスに感染した人の中に、SARS-Cov-2に対して細胞性免疫を獲得した人がいる可能性があります。
例えばXウィルスに感染すると、Xに対する免疫ができますが、同時にXに似たX'というウィルスにも免疫ができる可能性があります。これを交差免疫といいます。

ここまで書くと、「私はコロナウィルスに対する細胞性免疫があるのでは?」と期待される方もいると思いますが、
1. 細胞性免疫の有無を調べるのはかなり大変
2. 前回も書きましたが、細胞性免疫があったからと言って、新型コロナウィルスに感染しないという保証はどこにもありません

様々なウィルスで感染しにくい人は存在します。新型インフルエンザが流行した時も中年以上の感染が少なかったため、その世代は免疫を持っているのではないかと言われました。HIVも体質的に感染しにくい人が存在することが分かっています。
新型コロナウィルスでも感染しにくい人は存在するかもしれませんが、それは今後の研究を待つ必要があります。

Alba Grifoni et al. Targets of T Cell Responses to SARS-CoV-2 Coronavirus in Humans with COVID-19 Disease and Unexposed Individuals Cell 2020
Julian Braun et al. Presence of SARS-CoV-2 reactive T cells in COVID-19 patients and healthy donors medRxiv 2020
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