パーキンソン病の新薬(タバパドン)
タバパドンというパーキンソン病の新薬の治験結果が発表されました。
この薬は決して画期的な新薬というわけではなく、従来からあるドパミンアゴニストという範疇の薬です。パーキンソン病は脳内のドパミンが減る病気ですが、レボドパという薬を服用するとこれが脳内でドパミンに変わり補充をすることができます。ただ、レボドパだけを使っているとそのうち、薬効が不安定になったりジスキネジアという不随意運動といった合併症が出てきます。ドパミンアゴニストを併用すると、レボドパの使用量を抑えることができレボドパの合併症の出現を先送りすることができます。
脳内にはドパミン受容体というものがあり、これにドパミンが結合することにより作用します。ドパミンアゴニストは、ドパミンではないけれどこの受容体に結合し、ドパミンと似たような作用をおこすことができる薬のことです。ただ、このドパミンアゴニストにも色々な副作用があり、最近は昔ほどは使われていない印象です。
私が医者になったときは麦角系というドパミンアゴニストが主流でした、これらの薬を使うと稀ですが心臓の弁に異常が起きることがあり、急速に使われなくなりました。現在の主流は非麦角系という種類のドパミンアゴニストですが、これらの薬も眠気などの副作用があります。またドパミンアゴニストはレボドパに比べると、幻覚、首曲がり、衝動制御障害(ギャンブル依存症など)などの副作用が出やすく、少し使いづらいことも事実です。
ドパミン受容体にはいくつかの種類があり、現在主流のドパミンアゴニストはD2/D3という受容体に作用します。以前から、アゴニストの副作用は受容体の種類に関係しており、他の種類のドパミン受容体に作用する薬ができれば、現在のアゴニストの副作用も軽減されるのではなかと考えられていました。
こういった背景のもとに開発されたタバパドンは、D1/D5という受容体に作用するドパミンアゴニストです。今回の報告は、このタバパドンの国際共同多施設二重盲検試験の結果です。
試験機関は7ヶ月で、客観的な指標、主観的効果ともにプラセボと比べるとかなりの改善があり、直接比較ではありませんが、レボドパに近い効果が認められています。効果発現も開始後5週と早くから見られています。主たる副作用はめまい、吐き気が多く、現在主流のドパミンアゴニストで見られるような眠気、幻覚は少なく衝動制御障害もほとんど見られません。
私が医師になったときは、今よりもドパミンアゴニストが積極的に使われていたと思います。ただ、その後はMAOB阻害薬やCOMT阻害薬などの新薬が出たり、ドパミンアゴニスト特有の眠気など副作用もあり「大事な薬だとはわかっているけど少し使いづらい薬」という位置づけになって以前よりも使われなくなっている印象です(そもそも日本では、効果のある薬より副作用の少ない薬が好まれるという土壌もあります)。
しかし先述したように、レボドパにより病状のコントロールをより長く続けるためにはドパミンアゴニストは非常に重要な薬です(レボドパの合併症の出現を先送りできることが証明されているのは、ドパミンアゴニストだけなはずです)。
そいう意味でも、この効果が強く安全性の高いドパミンアゴニストが早く日本で使えるようになると良いと思います。

