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パーキンソン病と骨折

[2026.05.17]

最近、イギリスからパーキンソン病と骨折、および骨粗鬆症の関連に関する重要な報告がありました。この論文は、パーキンソン病やパーキンソニズムの患者様において「実際の診療でどの程度、骨粗鬆症の治療が行われているか」を大規模なデータベースを用いて調査したものです。

パーキンソン病患者における骨粗鬆症治療の実態

研究の結果、パーキンソン病患者は骨折リスクが非常に高いにもかかわらず、骨粗鬆症治療が十分に行われていないという実態が浮き彫りになりました。特に男性や、肋骨を骨折した方、介護施設に入所されている方において、治療が見送られやすい傾向が示されています。

パーキンソン病で骨折リスクが高まる背景

パーキンソン病(PD)では、さまざまな要因が重なり、骨折リスクが劇的に高まります。

転倒リスク 姿勢反射障害や歩行障害により転倒しやすくなる
骨密度の低下 病気そのものや活動性の低下により骨がもろくなる
栄養状態 ビタミンD不足などが生じやすい
身体機能 筋力低下や活動性の低下が顕著になる

一般の高齢者と比較すると、骨粗鬆症性骨折は約2倍、大腿骨近位部骨折にいたっては約3倍に増加するとされています。骨折は、ADL(日常生活動作)の低下や死亡率の上昇に直結するため、非常に深刻な問題です。

英国の大規模データを用いた研究の概要

本研究では、英国の大規模プライマリケアデータベース(CPRD)を用い、脆弱性骨折(軽い衝撃で起こる骨折)を経験したパーキンソン病患者を対象に、治療の介入状況を解析しました。

研究の対象と方法

調査期間 2010年〜2019年
対象者数 パーキンソニズム患者 21,581人
平均年齢 74.7歳(女性が40%)
骨折経験者 1,823人(全体の8.4%)

主な骨折部位の内訳

股関節 44.6%
椎体(背骨) 14%
上腕骨 10.8%
肋骨 6.3%
骨盤 4.3%

骨折後も進まない骨粗鬆症治療の現状

研究の結果、骨折を経験してもなお、適切な骨粗鬆症治療薬が処方されていない現状が判明しました。

骨折前から治療を受けていた割合

骨折する前に骨粗鬆症の薬を処方されていたのは、わずか12.3%に過ぎませんでした。これは、多くの患者が実際に骨折するまで骨の問題を認識されていないことを意味します。

骨折後の治療介入状況

英国の指標では、骨折後16週間以内に治療を開始することが望ましいとされていますが、実態は以下の通りでした。

骨折前 12%
骨折後16週以内 38%
骨折後48週以内 53%

つまり、骨折から1年近く経過しても、約半数の患者様が未治療のままであるという結果です。

治療の実施状況に影響する要因

今回の調査では、どのような患者様が治療を受けやすく、あるいは受けにくいのかという傾向も明らかになりました。

治療に繋がりやすいケース

  • 女性:男性よりも約2倍、薬を処方されやすい傾向があります。「骨粗鬆症は女性の病気である」という認識が影響していると考えられます。
  • 椎体骨折:背骨の骨折は典型的な骨粗鬆症による骨折と認識されやすいため、治療に繋がりやすいです。

治療が見落とされやすいケース

  • 肋骨骨折:整形外科以外の診療科で診られることが多く、単なる外傷として処理されがちです。
  • 介護施設入所者:余命や嚥下障害、すでに多くの薬をのんでいるなどの理由から、治療が控えられてしまうケースが散見されます。

脳神経内科の視点から:骨を診ることも治療の一部

パーキンソン病の診療において、どうしても震えや動作緩慢などの運動症状に目が向きがちですが、骨の健康を管理することも極めて重要です。特に、転倒歴がある方や体重減少が見られる方、猫背(円背)が目立つ方は、骨折のハイリスク群として認識する必要があります。

まとめ:二次骨折を防ぐための積極的な評価を

この大規模な研究は、パーキンソン病診療における治療ギャップを明確に示しました。今後の実臨床においては、以下のような積極的な評価と介入が求められます。

  • 骨折リスク評価
  • 定期的な骨密度検査の実施
  • ビタミンDが足りているかどうかの確認と補給
  • 軽微な外傷による骨折を「骨粗鬆症のサイン」と捉える意識

パーキンソン病では骨折により日常生活能力が著しく低下し、自宅での生活が困難になる人も珍しくありません。今後、杉並区では骨粗鬆症健診が予定されていますので、パーキンソン病の方や、転倒の既往がある方は受けてみて下さい。

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